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11月にポルトガルの首都リスボンで行われた Web Summit 2019 に参加する機会があったのですが、日本に帰って2週間が経ってもあまり日本語のレポート情報が出てこないので、自分の目で見て感じてきたことを自分のこのブログでひっそりと Open&Share します。

Web Summit とは

2009からヨーロッパで開催されているテックカンファレンスで2016年にダブリンからリスボンに開催地を移し、今年度は163カ国から7万人が訪れました。







はじめての海外カンファレンス参加

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今回私たちは、所属する企業が応募していたブース展示を行うために、展示スタートアップの一員として参加する機会を得ました。ブース展示では訪れた方やそのへんを歩いている方に対して自社プロダクトであるBtoCのWebサービスの説明や意見交換を行いました。

そんな自分は、実を言うと、海外テックイベント初参加。これまでは、SXSWもCESもTechchrunchもTOAもアルスエレクトロニカもミラノサローネも、英語堪能でグローバルマインド溢れる方々の活躍をSNS越しで応援している日本大好きおじ、おにいさんでした。

また、所属企業での役割もプロダクト開発のPM的ポジションなのでこういうお祭り事ではずっとお留守番側だったのですが、今年3回目の海外カンファレンス出典ということでいよいよ出番が回ってきた感じ。しかも、のほほんな視察&情報収集ではなく、ブース展示。もちろんスタートアップなので、安くはない渡航費・滞在費・参加費は投資いただいたお金から捻出しているというプレッシャーもあります。

初めての雰囲気に圧倒されはしないか?英語は通用するのか?手慣れている同僚もいるとは言え、冷静に1/2人の戦力になれるのか、不安があるなかでの渡航なのでした。


カンファレンスの特徴


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今年も日本からの参加者はたったの中200人だった(7万人中)そうで、日本人の間ではまだまだ知名度が少ないヨーロッパのWeb Summit。そんな中、数少ないエヴァンジェリストな方がすでに、このイベント全体のコンセプトやカラー、他のテックカンファレンスとの相違点を整理して発信してくださっています。

Web Summitとは何のイベントか?と聞かれたら、「世界を良くするために皆ができることを見せ、話し合うイベント」と答えるしかない。出展ブースやプレゼンテーションでよく見られたのは「気候変動・環境問題」、「サイバーセキュリティ」、「BREXIT」、「5G」、「ダイバーシティ」などだが、主催者が定めたジャンルなどは無く、それぞれが描きたい世界の実現に向け、自らのビジネスや政策を話しあう場、という印象だった。
【Web Summit Report】地球の裏側で感じた地球環境とイノベーションの未来|たくみ@NY→大阪へ|note

テクノロジーカンファレンスと言われてますが、すごくテックな内容かというとそうでもなく、どちらかというと概念論が多いです。今後のビジョンを考えている人にはヒントを得られる良い場所だと思います。ちなみに、Web Summitといえばセンターステージとナイトサミットという印象がある方もいるかも知れませんが、それぞれエンターテインメントとしては楽しいですが、深い学びが得られる場所かというと、そうでもないと私は思います。
「自ら行動し、己の目で判断」ファーストペンギン、山崎徳之氏に聞くWeb Summit協賛のワケ:MarkeZine(マーケジン)

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以下は、上記ブログと重なる部分もありますが自分の印象です。

・専用アプリが不可欠なカンファレンス。展示やセッションの把握はもちろん、同時通訳や文字起こし、参加者どおしのコミュニケーションまで、アプリがある前提で体験がと満足度の設計がされている。イベントテック分野これから面白そう。

・大手ブランドも、GAFAMも、イケイケスタートアップも参加しているけど、基本は2000社以上集まったスタートアップ優遇。自分たちもいち出展スタートアップとして事前・現地・事後の手厚いフォローを実感しました。

・カンファレンスとしてのテーマはない。多様な切り口やカテゴリのセッションが用意されている中、自分がどのカンファレンスを選んで参加・聴講したかで参加者ごとに印象は変わる。

・(こういう感覚自体が旧いのかもしれないけど)日本でのテックイベントと比べて女性が多い(46.3%)。特に40代以上の責任や役職があるであろう方たちが熱心でした(費用かけてリスボンまで来れるのは偉い人、というだけかもしれないけど)

・テックスタートアップに典型的なマッチョ感は薄かった。ディスラプトと急成長が全てではなく、この場の空気や熱量を共有しながら漸次、世の中をアップデートしていこうという雰囲気はヨーロッパぽいのか。そういう意味で狂騒感もそれほどなく地に足のついた感じ。


・・・などと書くと、Web Summit は具体的成功へのコミットよりも理想主義的でゆるふわなのかな、と感じられるかもしれませんが、少なくとも展示参加したスタートアップにとっては、とにかくたくさんの機会を作れる&作ってもらえるので、ヨーロッパの市場を意識するプレイヤーにとっての「成功へのパス」がつかめる絶好の機会であることは間違いありません。


まるでサマーソニック

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3日のうち展示ができる日は1日のみなので、残りの2日はビジターとして他社の展示を見て回ったりセッションを聴講して過ごしました。

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15のカテゴリ・30のステージで繰り広げられるセッションをアプリで調べながら、広い会場をいったりきたりする(合間でフードやドリンクを楽しむ)のは、大型ロックフェスと同じ行動パターン。ちなみに、大きな川沿いの新市街地でメインスタジアム+5つのホールという構成はサマーソニックさながらでした。


あと、ほとんどのセッションは25分以内と短くない?という時間で区切られているのも集中力が切れずにちょうどよかったかも。反面深める考察やディスカッションには向いていないけど。

Web Summit 2019 schedule

参加したセッションから中からいくつかを紹介します。

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「反アメリカ的/オルタナティブ」の象徴として話題となったであった、エドワード・スノーデン氏や Huawaiチェアマンの基調講演、、は見ていません ^^


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元フットボーラーとして、ロナウジーニョ、カントナも出てたけど、ロナウド(ラ・リーガのバジャドリードのチェアマン)が大人気。


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"The future we build needs to be open"
Wikipedia CEO の「知識の危機、信用の危機の時代」という言葉にドキッとする。


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"Can anything be private anymore?"
ケンブリッジ・アナリティカを告発したブリタニーカイザーさんは「個人と企業の(IQ (intelligence quotient )だけではなく)DQ (Data quotient)を養うことが必要」と説く。


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"Combating the weaponisation of data"
ブリタニーさんのもうひとつのセッション は立ち見で身動きも取れずさながらフジロックのRED MARQEE。


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"How we'll arrive in 2025"
リスボンの街で普通に使われているLimeのCEOがブリタニーさんと並んで多くのセッションに出ていました。安全性と接続性を強調してた。個人所有のシェアカー、自動運転、リアルタイムの地図更新など、この分野はデータを貯めることができるエリア(市場が解禁している所)から着々と進んでいる感じ。


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"How to build and scale products for and with users"
Reddit CTO からはモバイルアプリ開発時の既存コミュニティとのコミュニケーションにおけるリアルな成功と失敗経験。「改善を続けていれば批判はずっとは続かない」「安易に約束しない」「Don't tell people how to feel!」「Have a large and flexible Beta test.」「否定派も含む全体ユーザーを説得することができるベータユーザーコミュニティを育てる」


いち展示スタートアップとして

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さて、肝心の自分のお仕事であり最も不安だった、スタートアップエリアでの企業ブース出展ですが、結果としては役割は果たせたまして(同僚のヘルプを借りることなくパラレルで対応できた)、個人的にもとても大きな経験ができました。

少ないビジネス英語経験と限られたボキャブラリーの範囲ではあるものの、プロダクトの説明と情報交換コミュニケーションできたのは、

- ヨーロッパのほとんどの人は英語ネイティブではなく第2外国語なので、お互いのシチュエーションに慣れている
- スタートアップに対して営業したい企業の人の割合が多く、そういう人はつたない英語でも真摯に聞こうとしてくれた
- プロダクトの説明はもちろん質質疑応答も含めて、会話の大半は繰り返しなので、(1日の中でも)数をこなすほどこなれてくる
- WebSummit QRコードスキャン&アプリや、自社で用意したビジネスカードなど、keep in touch をサポートするツールが充実しているので、会話の出来が釣果のすべてではない

などなど、多様な国から多様な人が集まる WebSummit がデビュー戦であったことに感謝です^^

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さて、個人的な不安は開始早々に「なんとかなりそう」とわかったので、その後はひたすらプロダクトの説明やデモを行いまして、同僚と2人で2〜300人と話した所感はこんな感じです。

- エンジニアは2割くらい
- 視察中の日本の方が2割くらい(自主参加&日本人からも知られていないのでよく見つけてくれたと思う)
- 女性は6割くらい
- スタートアップ向けのサービスを持っている会社の方が5割くらい
- 特にウクライナ、ロシア、チェコなど、旧東欧の企業の人からの売り込みが熱心
- その他、投資家、メディア企業、ジャーナリスト
- 事前にアプリの中でメッセージをくれた人に展示を招待したら「行けたら行くわ」的な感じでカジュアルに来てくれる
- 日本で働いていた or 働きたい エンジニアやデザイナーが探して来てくれるのはうれしい
- 京都から来ましたと伝えると、思い思いに京都の思い出を語ってくれるのもうれしい
- プロダクトへの意見交換では、短い説明から「旅行」「教育」「プライバシー」「サステナビリティ」についてのアイデアやツッコミがあった

私たちは他の欧州のスタートアップと同じく、個社として応募・採択されて展示を行い、もちろんプロダクトや資料も多言語対応されていたので、展示ブースの外見からはこの人たち(よくある)アジア系だな〜くらいの印象しかありません。

そのような良い意味での先入観の少ない状態から、はじめまして〜プロダクト紹介〜意見交換ができたことは、意外と(WebSummitの日本での知名度&プロダクトのステージが)今だからこそできる貴重な経験だったのでは、あとから気づきました。


グローバル経験値の低い人にもおすすめ

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以上、展示スタートアップ企業としてWeb Summit 2019に参加して感じたことをつらつらと書きました。

会場を回るだけではなく展示を通して「当事者」になったことで、イベントのホスピタリティや細部のクオリティが体験できたこと、言語も文化も異なるさまざまな地域の「同業界人」と交流ができたこと、アメリカでもアジアでもないもうひとつの極のマーケットを感じてトレンドを知れたことは、テック業界に属するいち個人としても大きな経験となりました。

昨今は日本だけで仕事をしていても、ノンジャパニーズな方々と仕事をする機会は増えましたが、日本というホームに自らやってくる人とコミュニケーションをするのと、自分が「外国人」という立場で話をすることは異なります。

特に、自分自身が格好のサンプルなのですが、グローバル経験値がまだ低く、実はコンプレックスを感じていたような、典型的日本のWeb業界人が最初に海外のマーケットやシーンに触れる場として、Web Summit は絶好の機会でした。

そして、結果として自分はちょっぴりの自信と今後もインターネットをお仕事にすることについての大きなモチベーションを日本に持ってかえることができました。地球の向こう側にこんなにたくさんの同じ仕事をしている人たちがいるのだから自分も頑張ろう、と思いました(単純)


リスボンは本当に素敵な街でした

この出張滞在では、各日程の夜と終了後の1日はリスボンの街を探検できました。スタートアップの誘致を強化しているというトレンドに関係なく、滞在して働く街としてリスボンはとっても快適で気持ちの良い街でした。

- 古いもの(トラム)から新しいもの(Uber, Lime)まで交通が便利。
- 空港から地下鉄直通でらくちん
- 物価が安い。Uberは日本やイタリアの1/4-1/3くらいでした
- アパレル・ブランドも安い。Camper 2足も買っちゃった。
- パンとチーズとワインと魚がおいしい
- 成熟した観光都市なのでどこでも英語が通じるしみんな親切
- トーキョーっ子みんな大好きAFURIのラーメンが食べられる




Web Summit もリスボンも、日本から訪れて体験する人がもっと増えるとうれしいです。


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