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新年初頭から未来を考える刺激的なイベントに参加しました。そして、デジタル空間に現実世界の全てを投影再現して、フィジカルとバーチャルが体験する対象として対等に存在してかつ混ざり合うことを「デジタルツイン」と呼ばれていることを知りました。

デジタルツインの夜明け -Dawn of the Digital twin- | MTRL KYOTO(マテリアル京都)

このデジタルツインの「バーチャル側」を支えるテクノロジーとなるのがVR(XR)。昨年2018年は自分にとって(それまでもちょいちょい前の職場でVIVEやOculus RiftのHMDをかぶる機会はあったものの)Oculus Goの所有をきっかけに自分の中でVR(XR)への期待が大きくなった1年でした。
  • ノンゲーマー/ノンPCユーザーとして、Oculus Go ではじめてVRが身近に
  • フジロックライブを見て没入ができる環境というだけでも体験が変わることを実感
  • 「Oculus Roomに集まって話す会」でコミュニケーションが変わる期待

そんな中、この年末年始は冒頭のイベントをはじめ、お声がけいただいた企業や知人友人とディスカッションする貴重な機会がありました。

そして、それらのインプットや対話を通して、BtoCのインターネットサービスの開発に関わってきた自分が、興味を持って見届けたいテーマがひとつ見つかりました。


「情報発信・共有手段としてのVRは普及するのか」


VRは良くも悪くもわかりやすくインパクトのある新テクノロジーなので、あんなこともできます(優れたエンジニアがいれば)、こんなこともできます(大きな広告予算を自由に使わせてくれば)というような「突飛な」体験(という言葉自体受け身ですよね)のショーケースがいまは先行している段階です。

一方で自分はインターネットユーザーに平等に与えられた表現手段としてのテクノロジーに興味があります。技術やプラットフォームの開拓のその先に、大多数のユーザーがVR発信者にもなりうるシナリオはあるのでしょうか。

- テキストによる情報発信はインターネットとブログによってプロの職業物書きやWebデベロッパーだけのものではなくなりました。
- クリエイティブな写真による情報発信はiPhoneとInstagramによってプロの写真家だけのものではなくなりました。
- ムービーを使った情報発信は同じくiPhoneとYoutubeやTikTokによってプロのテレビ・映画制作者だけのものではなくなりました。

VRが成熟する近い未来は、スマートフォンのその先のデバイス/インターフェイスを用いて体験するという意味において、2000年代のPC時代、2010年代のスマホ時代の次のフェーズとなります。

はたしてそのとき、世の中のパパは運動会の様子を(VR視聴が前提の)360度動画で撮影してクラウドにアーカイブするのか、ティーンエイジャーは友だちとの自撮り360度動画にフィルターをかけてシェアするのか、世の中の結婚式はカメラマンによる撮影ではなく360度動画で記録されることになるのか、旅行で訪れた場所の記録は360度動画で公開して見てもらうことが主流になるのか。

だとすると、そんな湯水のようにアップロードされるVR動画(に特化した)CGM・SNSは登場するのか?キラーアプリやプラットフォームはどの国の企業が開発してどのようなUIになるのか?編集もVR内で行うのかそれともPCをやスマホその他デバイスと役割分担するのか?その中核を担うプロダクトのビジネスモデルはどうなるのか?

・・・などなど考え出すと妄想は尽きません。

Twitter は140文字のフォーマットで、LINEはオープンソーシャルのカウンターとなる世界観による差別化でいち時代をつくりました。新たな表現手段がコモディティ化するとき、純粋な技術や処理能力以外の要素、ビジョンや世界観やメッセージがはまったサービスやプラットフォームが登場してくることでしょう。

なお、こういった妄想をするときは、いまいまのVRのもろもろの面倒くささ、360度動画を撮るカメラの普及度、動画配信環境の貧弱さには囚われずに思考することが必要です。(今日のイベントの中でも「現在のVRデバイスはまだツッコミどころが多い黎明期」「iPhoneも最初のバージョンでは天気とカレンダーくらいしか役に立たなかった」という話がありました。)

インターネットがオールドマスメディアにはなかった「全員が情報発信者」という自由を獲得するために進化したPC・スマホ時代の歩みからはや20年、VRテクノロジーが新たなスタート地点をわたしたちデベロッパーに提供してくれることが楽しみで仕方ありません。


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以上、ずっとXRに携わってきた人から見えれば「今さら」な着眼点なのですが、聞くところによるとどうやら、コンテンツやアート作品づくりではなくプラットフォーム事業・プロダクトとして、つまりはゲームチェンジャーとしてVRに関わっている人は(AIやブロックチェーンなどの超人気銘柄と違って)とても少ないのが現状だそうです。

先述のとおり「今見えているもの」が発展途上だったり、(映画やアニメなどのフィクションで過剰にイメージされた)期待に及ばなかったりすることで、市場からの評価はハイプ・サイクルの幻滅期に嵌っているVR/XRですが、だからこそ、ずっとWebを生業にしてきたいちディレクターとして、今から楽しみに見届けたい、そのためにキャッチアップをしたいと感じた2019年初頭なのでした。



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