年末年始に読んだ本のレビューです。

思えば2017年は、AI(人工知能)という言葉がメディアに溢れるだけではなく、自分の生活・仕事においてもずいぶん身近になった1年でありました。

1年前なら「でーたいえんてぃすとって人気の職種でうらやましいな〜」とどこか他人事であったことが、気がつけば自分自身がAIベンチャーのマーケティングに関わったり、自宅にも職場にもGoogle HomeとAmazon Echoがあったりという環境に移り変わっていました。


また、もともとウェブエンジニアからキャリアをはじめた自分にとって、今までのウェブ・スマートフォンアプリのプロダクト開発は「作業としてなにをやっているか」がおおよそ理解できていたのですが、「人工知能」に関してはその貯金がまったく通用しないので、危機感半分、純粋な知的好奇心半分で、AI関連書籍を読んだり情報収集を行っています。

そんな状況、現代の魔法使いさんの言葉を借りれば「超AI時代の生存戦略」を、インターネット産業に関わっているわたしたちはおじ、もとお兄さんたちは真面目に考える、というか、ちゃんとシフトしていかなければ、いよいよ終わった時代側の人間になってしまう岐路に立たされていると感じています。



さて、本書は副題どおり「人工知能時代の意思決定プロセスデザイン」について、

【SCOPE】いま何が起きつつあるのか
AIアシスタントによって再編されるUX/マーケティング手法/ビジネスモデル

【STAGE】意欲前意欲後領域
AIアシスタントが開拓したコミュニケーション領域に必要なユーザーアプローチ

【STRATEGY】 戦略の来し方/行く末
AIアシスタントがサービスの中核となったときに配慮すべき戦略あれこれ

【SKETCH】フューチャー・ビジョン
AI時代のビジネスモデルやコンセプトモデルの提案

が見開き2ページにつき1テーマで見やすい形で50テーマ紹介されています。



以下、読んでいて自分が「なるほど」と思ったポイントの読書メモを幾つか紹介します。


「意欲前領域」の攻略
AI関連技術によって新たに開拓されるコミュニケーションプロセスの主戦場。ユーザーステータスのリアルタイム把握とタイミングが満足度を左右する

デピュタイズアプローチ 意思決定の代行
AIアシスタントが無関心化したユーザーから決断や行動そのものを委ねられ、代行・実行すること。人工知能による「予測」の技術が活かされより価値を生み出すことになる背景

オプトアウト
無関心化したユーザーに必要なものを選択させることはそもそも難しい。最初から与えておいて不要なものは捨てられるようにする仕組み。ユーザーの怠惰さを逆手に取る

サブスクリプション
「定額のお得感」から、AIアシスタンスの潮流をうけて「選択・手続きの心理的ストレスからの開放」のためのサブスクリプションへ

満足体験への代価
個々の商材ではなく満足体験にお金を払う時代へ

ファシリテートアプローチ 選択すべき機会を通知
選択肢の提示よりも決断する適切なタイミングを促すサービスがAI時代には適している。情報の精度もさることながら情報伝達のコンテキスト(タイミング・順番・表現方法)が重要

A2/VRMモデル
AIアシスタントがあらゆる個人的なタスクの管理・実行を代理するハブとなりベンダーを仲介する。企業が主体となりデータを管理するCRM、個人がデータと関係性を管理できるVRM

人のワーキングメモリー不足はストレスに
会話形インターフェイスでは選択を強いることはUX低下につながる。保留ではなく適切にスヌーズしてあげることでユーザーのメモリを節約する。スヌーズのための「全部記録」アプローチ。

機能精度はテクノロジー、レイテンシー(使い勝手)はデザイン
いつかドヤ顔で言ってみたくなるフレーズ(笑)


・・・と断片的なメモではよくわからないはずなので本で読んでみてください(笑)
新規の知識というよりは今まで個別で理解していた概念が、AIアシスタントを介した一連の体験ストーリーの中で、必然として繋がったことが収穫でした。

また、本書でAIアシスタント時代の理想形または(一旦の)完成形が説かれるのを読むにつけて、今日のチャットボットなりAIスピーカーなりの会話形インターフェイスはまだ何もできていない発展途上のものであることも再認識できました。英語ベースのAIは進化しているけど日本語だとどうなんだという問題もあります。




本書には人工知能そのものの技術的な話題は一切登場しませんが、昨今のAIスピーカーではどこまでできるようになっていて、何がまだできないかが前提知識としてないと、内容がイメージがしづらいかもしれません。そして、ここ数年のUI/UXのトレンドと、AIDMA・AISASなどのような消費者心理の変遷が基礎知識として理解できている人の方が、本書で述べられている「人工知能時代の変化」がより腹落ちしやすいでしょう。(つまりは現場のWebディレクター向けというわけです)

現時点での主力プレイヤーである Amazon(Alexa) と Googleは、もともとがデータ独占(しようとしている)企業で、本書で述べられているA2/VRMモデルをまるごと包含しようとしている状況になっているため、大局の理解をやや難しくしているふしがあります。

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そんな中本書を読むことで、今後いち労働者としてこのA2/VRMモデルの新しい生態系の中でサービスやプロダクトの企画開発を行っていくのだとすれば、自分がA2/VRMモデルの中のどのセクション(PDS(personal data strore)、フォースパーティー(AIアシスタント)、ベンダー(個別のタスク(ビジネス)を実行する事業者))に関わろうとするのかを想像・意識することができました。

人工知能そのものまたは人工知能と接点があるプロダクトに関わる人はもちろん、来たる「AI化」の影響から逃れられない業種(具体的に言うとデジタルの広告やマーケティング)に関わる人が読むべき一冊だと思いました。




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