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midohsuzi
3泊4日で台北旅行に行ってまいりました。20代にして日本の地方旅にハマって満足していたこともあり、かなり久しぶりの海外旅行です。

この旅は会社の研修旅行だったので"國立"故宮博物館や九份のような定番の観光地に行くわけでもなかったのですが、限られた自由時間を使って、以前から気になっていた「誠品書店」を訪問、そして軽いカルチャーショックを受けて帰ってきました。

台湾の誠品書店とは、、、
創業は1989年。台北市大安區仁愛路に第一号店を開き、6年後の1995年に現在の敦南店の場所に移転する。このタイミングでファッションや飲食、ライフスタイル雑貨を中心に、台湾の中でも特に洗練されたブランドを集積させた。
その外観からは「書店」とは想像しがたく、エントランスや1階付近の高感度なファッションエリアを見て、初めて訪れる人は「ファッションビルの中にテナントで書店が入っているのか?」と勘違いする人も多い。だが、2階3階を占める書店エリアに進むと、その充実ぶりにたいていの人は満足できるだろう。なにせ本は100万冊を超えるラインナップなのだから。すさまじい出版・書店不況の中、このスタイル、この業態は業界内外から注目を集めており、世界中から視察が絶えないという。

【Taipei】ますます多様化する「誠品書店」。アジアの“本屋さん”の未来は? 日経トレンディネット
僕が初めてその名前を知ったのは2011年の田端信太郎さんのブログ記事。代官山蔦屋書店など(行ったことないけど)このころからすでに日本が「参考にする」一つのモデルとして注目されていました。
つまり、21世紀の書店は「情報」を売ってはいけない。いわんや「紙の束」としての本を売るつもりでもいけない。これからの書店は、(自分の狭い興味範囲を超えた)情報との「出合い方」や、自分に必要な情報をもった人物と出会える「機会・文脈」を売っていく気構えを持つべきである。これは、平たくいうと、書店ではなく「知のスポーツクラブ」とでも銘打つべき業態だろうか。

TABLOG:台北・Eslite 誠品書店に「書店」が進むべき未来を見た。 - livedoor Blog(ブログ)
調べたところ誠品書店グループのうち、大きなお店は「信義旗艦店」「敦南店」「誠品生活松菸店」あたりで、この旅では駆け足で二店舗を見てきました。


誠品生活松菸店

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「松山文創園区」という日本統治時代の煙草工場を再利用した一大クリエイティブパークの敷地内に、古い建物と絶妙なコントラストを織り成している独特の湾曲したビルの地下二階地上三階部分が、もはや「書店」ではなくなった「誠品生活」です。

このお店の自分のお目当ては書店ではなく二階の「Crafts & Creations 」フロア。工芸品や雑貨、服飾からお菓子や楽器など、いろんなクラフト製品がそれぞれの工房の雰囲気を再現したお店で展示・販売されています。それがただ販売されているだけじゃなくてほとんどのお店では、お客さんが実際に作る工程に参加できるような仕掛けになっているんですね。
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売場内を歩いていたら突然エプロンを付けた女の子たちが食器に彩色をしていたり、オサレなアコースティックギターを作っているところを見学しながら試奏できたり。これは見ているだけでも好奇心を刺激されます。時間があれば作って帰りたかったなあ。

「書店」スペースは三階。本や雑貨の充実具合やゆとりのある知的なスペースの使い方は壮観でしたが「目新しさ」に関しては二階ほどのものはありませんでした。書店スペースを囲むように台湾のお茶屋さん(カジュアルなものから本格的なものまで)が並んでいたので、次回はここでお茶も愉しみたいものです。

三階の様子は下記の記事をご覧ください。
書籍スペースを囲むように、趣向の異なる茶藝館が5軒入っている。本とモノの割合は3:7となっているそうだ。「正直な話、書籍販売は1989年から15年連続で赤字なのですが、台湾への文化貢献をしたい、という思いで続けています。本だけでなくライフスタイル関連の商品と結びつけて販売することで新しい発見を創り、手にしていただくきっかけになれば」と広報の胡潔希さん。

【Taipei】ますます多様化する「誠品書店」。アジアの“本屋さん”の未来は? 日経トレンディネット
本が売れているというわけではないけどカルチャーとライフスタイルを作るべくこの路線を続けているというのがポジティブ、というか今まさに元気な都市なんだなあと実感。

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そして微妙な良い発色で絶妙に良い大きさの帆布のトートバックを見つけたので衝動買い。これはゆっくりプライベートで来たらめっちゃ散財しそう。

金曜の20時頃にお店に入ったのですが、お客さんは多くもなく少なくもなくゆったりという感じの中、客層はとっても良い(品がある落ち着いている)ことが印象的でした。学生よりも20代〜30代の男女が多かったです。

ほぼ日手帳、台湾・誠品書店レポート その2(松苑店)
http://www.1101.com/pl/2014techo_news/statuses/133095


誠品書店敦南店

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敦南店は「本店」にあたる店舗で24時間営業です。実際僕が訪れたのは23時頃だったのですが、書店フロアは通れない通路があるほど人がいっぱい。通れない、というのは訳があって、このお店では客が店内のあちこちで立ち読みならぬ「座り読み」をしているんです。
photo_by_Emma_Kwee_in_flickr(photo by Emma Kwee in flickr)

同じ誠品書店でも品の良い松菸店とは変わって(距離は地下鉄2駅分くらいしか離れていないんですが)街の大学生を中心とした若者が、豊富な本を貪るように読みあさっているパワーに圧倒されてしまいました。

その他のフードコートフロアや雑貨フロア・レコード店などは松菸店と同じく日本人から見た目新しさはなかったものの、23時を過ぎていることを考えると、まあ元気ですね^^。

もうひとつ誠品書店で気になっているのが「誠品講堂」という学びのイベント。日本の本屋でありがちな著者のトークショーやサイン会ではなく、各分野の専門家が来て本格的な講義やディスカッションが行われるそうで、敦南店はこうした機能も併せ持っている台北の現在進行形の文化基地なのです。

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台湾の24時間営業の本屋さん誠品書店敦南店|そうだ台湾へ行こう!観光グルメ夜市旅行案内!一人旅女子もナビ!
http://ameblo.jp/2180taiwan/entry-11737371608.html


新旧のモザイクと活気

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台北の市街地は世界の中でも最も日本と似ている都市ですが、似ているからこそ際立ついくつかの違いがとても印象に残りました。

ひとつは統一感があまり求められていないこと、逆に言うと違ったものが同じ場所に混在するのを気にしない。ビジネス街にあるびっくりするような古いボロ屋の食堂が、サラリーマンや土方さんも入り混じって賑わっていたり、台北101というでっかいビルのある大都会の一角に四四南村という戦後の移民軍人村の区画がそのまま再利用されてコミュニティスペースになっていたり。

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もうひとつはやはり街のパワー。宿泊地そばの士林夜市は、上野のアメ横+代々木のタイ・フェスティバルみたいなとっても活気のあるナイトマーケットなんですが、これが観光客メインというわけでもなく、連夜深夜1時過ぎまで賑わっています。

士林では圧倒的に10代後半〜20代前半の学生風の若者が多く、昔ながらの屋台や露店と日本にもあるカフェやNikeショップが肩を並べて分け隔てなく賑わっていました。

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そして屋台を離れて街の小洒落たカフェに入るとソファー席やテーブル席では、深夜にも関わらずその学生たちがノートを広げて勉強していたり、何やらディスカッションしながらプレゼンテーションを作っていたり。

この、今の瞬間の台湾が持つエネルギーは日本のそれとは明らかに違うと実感。ブランディングにしても、マーケティングにしても、文化水準や民族性が近いからといってこの「エネルギーと空気感」を無視して、お互いが安易にコピーしあうだけではダメなんだろうなと肌身で感じたわけです。



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