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大都会(東京23区内)から都会(京都市内)へ生活拠点を移して半年、こんな本を読みました。


本書の内容について、自分の超ざっくりした理解は以下のとおり。
  • ショッピングモールのある地方の若者の生活の満足度は高いが、仕事や将来には期待がなく悲観的
  • 都会とは違った形で世代間分離が進んでしまった今「新しい公共」を若者自身が望んでいる
  • 時代の多様性を受け入れる準備ができている若者と多様性自体に気づいていない大人たちが気づかねば
200ページちょっとのボリュームの中でその検証としてイオンモールを愛用する岡山の若い世代にアンケートしたり、Jポップの歌詞の変遷から社会との位置関係を考察したりしているのが曲がりなりにも地方都市出身で著者と同世代の自分にとって目線を合わせやすい一冊でした。

そんな本書の提題に対するネットでの反応は以下のような感じで、「実は都会よりもずっと快適」「ほどほど楽しめる」という部分が赤裸々に語られています。ちょっと前にはてな匿名ダイアリーで「ファスト風土化」に対する批判への反論も話題になったりしましたが、これは自分も含めて大人になってからずっと都会に住んでいる人には想像はできても、真に共感するのは難しいことなのかもしれません。

地方の若者はなぜ「イオンモール」を目指す? 〈WEB本の雑誌〉-朝日新聞出版|dot.(ドット)
http://dot.asahi.com/ent/publication/news/2013080400001.html

暇人\(^o^)/速報 : 「イオンモールがあるから都会に出る必要がない」地方にこもる若者たち - ライブドアブログ
http://himasoku.com/archives/51794922.html

さて、この本を読んでみようと思ったきっかけは今自分が東京から距離を置いて仕事をする上で向かい合う必要のあるカルチャーだから。スマホのAnalytics見たら八割五分が東京・神奈川からのアクセスだけどPVとUU伸びてるから無視していいよね、という自分の中での時代は終わりました。

そして大学進学以来都会に住んでいるので実は全然理解出来ていない、けどいつかは帰ることになるかもしれない故郷のカルチャー(親世代ではなく同世代以下の)を少しでも把握しておきたかったから。

そんな動機を持ちながら先々週、岡山〜倉敷〜香川〜徳島というまさに地方都市を旅しながらの読書で自分が目に留まった部分(kindle のマーカー)は以下のとおりです。

#ここで自分が語っている「地方都市」の定義は「都会(首都圏・京阪神・名古屋・福岡)と通勤・通学圏以上の距離が離れている車社会が進んだ都市」です。


独自に進化した地方都市カルチャー

地方の若者にとって、ドライブは移動手段以上の意味をもち、それ自体で余暇の一部を成している
極めてよくできたパッケージであり、まさしく「遠足」と呼ぶにふさわしい余暇の過ごし方なのである
こうした余暇のあり方を生み出したという点で、イオンモールは地方の若者の余暇を大きく変えた。しかし、一方で大都市に対する憧れが残っていることも事実である。その意味でイオンモールはまだ渋谷や原宿にはなってはいない
そこに行くのにも自動車が使われ(地方にはコンビニにも広い駐車場がある)、着いてしまったら、(大規模ショッピングモールほどではないにせよ)その人は匿名の存在となることができる
しかし、田舎のしがらみがなく、都会の喧騒もないその場所は、同時に田舎のコミュニティもなく、都会のイノベーションもない場所であった
地元が好きだと言っているのに、そこに住んでいる人のことがよく分からず、興味もないと言う。(一見)矛盾したこの態度が、私の感じたちぐはぐさである

ここで早くも「地方」と「田舎」の生活やコミュニティの違いすら明らかに違うことすら分かっていなかった自分に気付かされました。副題のとおり「地方都市」とは「都会」と「田舎」の狭間にある新しいカルチャーです。

〜ショッピングモールを中心としたカルチャーや生活は、ここ20年ほどで極度に発達・成熟しきってしまった(地域もある)ように見える。そこは同世代の仲間のみ(で年寄りは親親戚くらい)の比較的小さくて閉じたコミュニティ。

〜社会全体は不安定で不確かであった20年、地方都市では安心と安定を追求した結果とっても便利だけど(旧来の「田舎」とは違った意味で)閉じた世界をつくろうとした副産物として「ファスト風土」と揶揄される刺激の少ないカルチャーができた。

(一方でネットを通じた「ニッチ」化は地方・都会関係なく補完してはいると思いますが)


多様性に敏感な若者と鈍感な大人

コミュニティとイノベーションの両者を兼ね備えた「新しい公共」は、いつか彼らのなかから立ちあらわれてくるだろう。それをサポートするのが、次世代に「ファスト風土」しか残せなかった大人の役割である
それは一言で言うと、職場を構成している人々の多様性の高まりである。
つまり、職場の状況を見ると、昔の学生よりも今の学生のほうが、多様性のなかでもまれていると言うことができる。
ここで、多様性への組織の対応の4段階を確認しておきたい。これは谷口真美がまとめている「ダイバシティ(多様性)・マネジメント」である。
第1段階 抵抗 違いを拒否する 〈抵抗的〉  
第2段階 同化 違いを同化させる・違いを無視する 〈防衛的〉  
第3段階 分離 違いを認める 〈適応的〉  
第4段階 統合 違いをいかす・競争優位性につなげる 〈戦略的〉  
結論から先に言うと、今の若者たちは「分離」の段階でハイポコミュニカティブ(過小にコミュニケーション志向)な人と、「統合」の段階でハイパーコミュニカティブ(過剰にコミュニケーション志向)な人とに二極化していると私は見ている
社会の多様性に鈍感で未だ「同化」の段階にある「大人」たちかもしれないという疑念が生じてくる。つまり「大人」は、彼ら若者と本当に「対話」をする気があるのか、ということである
「何を言ったって 何をやったって ダメだダメだって言うんだ」と、自分たちの言うことに耳を貸さない大人たちを批判した後、最後に訴えられるのは、「上じゃなくたって 下じゃなくたって 横にだって道はあんだ」ということである。

多様性を頭で理解するだけではなく生活の中で当たり前にあるものとして受け入れる準備ができているか、さらに進化すると、異なるカルチャーを恐れず積極的に対話した上で共存することができるか。この課題に対して今の大人(団塊ジュニア以降)に比べて、自然と準備ができているのが、モータリゼーションとショッピングモール文化の中で育った地方の若者だと論じられています。

話は少しそれますが、当ブログでも「多様性ガー、多様性ガー」と言っている自分ですが、上記のダイバシティ・マネジメントの4段階に照らし合わせてみると、主張をしているだけでは第3段階にすぎないことがわかりまた。そして、日々ネットメディアをにぎわす炎上ネタ。多かれ少なかれ価値感の多様性が背景にあるのですが、第1・第2段階での議論が多いことが改めて分かりますね。建設的な議論とは難しいものです。


地方都市発・新しい働き方への希望

本書中でも語られている未来への悲観的な見通し、
倉敷市に住む20代の介護職員、2さんを紹介しよう。彼は余暇そのものを充実させるのではなく、余暇を仕事の延長線上と捉えることで、仕事のきつさから来る余暇の不満を解消しようとしている。
「低賃金労働のつらさをやりがいによってカバーしている」と聞くと、それは経営者によって都合よく遣われているだけだと思う人もいるかもしれない。いわゆる「やりがいの搾取」と呼ばれる状況だが、私はそれを若者自身のギリギリの生存戦略とも捉えている。

このような地元での仕事や未来への諦観をもって、一念発起して東京に出ても、殆どの人は周りのイノベーティブな空気を吸うことができるだけ。都会での競争で上手く立ち回られなければ、「"都会版"やりがいの搾取」のスパイラルにハマるだけ。

さらには、大都会でイノベーティブな仕事にありつけたとしても、その競争スタイルや都会での生活のめまぐるしさに合わせられない人もいます。結果、少なくない割合の地方出身者は大都会から地方へ帰ることを検討するのですが、仕事内容の「グレードダウン」や思い込みの「田舎のカルチャー」を恐れて尻込みしています。

そんな現実の問題意識の中で本書を読むことで可能性を感じたのは
  • 「ほどほどパラダイス」として成熟しきった地方都市が新しい変化を欲している
  • 地方の若者たちは多様性の時代を迎え入れて適応する用意ができている
の2点でした。海外のコピーでもなく東京のお下がりでもなく、地方都市(とその文化圏)それぞれの特徴を生かしたカルチャー、コミュニティ、ワークスタイルを構築できるかもしれません。それが本書で言うところの「新しい公共」の手によるところになるのか、多様性の第4段階(統合)を実践する企業たちの手によるところになるのか。

若者が地方にこもった、ではその後どうするのか。もしかしたらそれは、チョロQのように、後ろに引けば引くほど、前への加速が強まる可能性もある。地方の若者が無意識的にでもその準備を進めているとしたら、これは相当面白い。本書の「こもる」という指摘は暫定的な状態であって、もしかしたら「地方って今は逆に最先端」に変わっていくかもしれないのだ。
阿部真大『地方にこもる若者たち 都会と田舎の間に出現した新しい社会』 / CINRAのサイトを見ている岡山市民は中野区民より多い -レビュー:CINRA.NET
http://www.cinra.net/review/20130704_book_tokaitoinaka.php



・・・以上、今このタイミングで自分が読む本としてはなかなか考えせられるところがありました。

めったにクルマを運転することもなく、人生の半分近くを一人暮らしで過ごし(書いてびっくり!)ショッピングモールにもカートにもお世話にならない都会の暮らしをしていると、肌感覚でわからなくなってしまっている「地方都市で暮らす」という「感覚」。僕のように大学進学や就職をしてからずっと都会で暮らしてきた30代以上の人には、わかっているようで全然知らなかった気づきも多いので一読をオススメします。(kindle なら475円!)






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