sikyoku 
この1週間、Web/IT系のネットメディアで立て続けに
在宅勤務のノウハウについての記事をいくつかみかけました。

在宅勤務を検討する全ての人たちへ 【増田(@maskin)真樹】 : TechWave

在宅勤務のよくない点--陥りやすい10の落とし穴を紹介 - CNET Japan

在宅勤務できるなら減給でもok? - スラッシュドット・ジャパン

個人的に大いに同意できる部分は多い一方で思うのが、このようなワークスタイルは依然として「マッチョ」もしくは「変わり者」な一部の人達のムーブメントなあということ。最も適しているはずのウェブ・IT業界の中だけでも多くのワーカーが会社に来たがるくらいなのだから、大地震があった次の月曜でも動いているかいないかわからない電車に乗って会社に行こうとするような人たちが理解出来ない僕の方がマイノリティなのは明らかですね。

また、自分のような独身で極めてフットワークの軽い生活を送っている人にはいいけど、守っていくべき家族や土地がある人にとっては、表面上の在宅勤務と引換の収入減は受け入れられるものではないということも理解しています。

本質的なことを考えると、組織の中で在宅勤務(会社に行かないワークスタイル)を導入することは、小手先だけの制度の調整だけでは不十分で、日本人の仕事に対する、もっと言えばお金に対する人生の価値観の変化まで必要とするなかなかのドラスティックなことなのだということが改めてわかったような気がしています。(この話は長いのでまた別で・・)



さて!ここからが本題です。

今日、そんな壮大なテーマとは別次元の理由で、在宅勤務ないし遠隔地勤務が検討されています。震災の影響による節電と安全(安心感)の問題です。
こちらは、今後数年・数十年かけて変えていこうという悠長な幻想ではなく、トウキョウのワーカーが生産性や労働風紀を下げずにこの2011年の夏季を乗り切るための切迫した問題かと認識しています。

※本当に節電が必要なのかとか東京が安全なのかという議論は他所に譲ります。

ということで、さしあたり節電を主目的としつつ、将来のワークスタイルの変化への慣らしというか実地検証として必要な意識改革(っていうほど大げさかどうかは元の組織の風土によりますが)を3つほど挙げてみます。

  1. 必然性のない会議やミーティングを見極めて代替の方法を試す
  2. 物理的に同じ場所に集まらなくてもミーティングができる方法を模索する。
  3. 1・2の推進について組織として理解・支援をする

共通するテーマはひとつだけです。「対面でのコミュニケーションの頻度と必然性を減らすこと」
在宅・もしくは遠隔地で仕事が出来るかどうかは、職種に左右される部分も多分にありますし、極めて個人的な問題でもあります。別に会社に来る人が悪いわけではないし、来ない人がマイノリティーであることは変わらないでしょう。そもそも、出社したほうが格段に捗る職種の人はじゃんじゃん出社すればいいと思います。

そんな状況の中、出社しない人が存在すること、槍玉にあげられそうなのは、元来対面で行うもの(べき)だとされていた会議・ミーティングでしょう。


1)必然性のない会議やミーティングを見極めて代替の方法を試す

これは、昨今の節電騒動以前に、21世紀の企業ならどこでも取り組んでいるはずことです。「話したほうが(俺様の準備の時間がいらず)早いから」とか「(文章で論理的に伝えることが苦手な俺様が)メールやスカイプで言うよりちゃんと伝わるから」とか言う理由で業務中とは言え、多くの人の時間をいたずらに拘束するような会議はなくしましょう。
(俺様さまのスタンスを否定しているわけではありません!秘書や書記をつけてください!)
個人的には、今までの仕事人生振り返ってみても上司や同僚からの心に響いたメッセージって、メール・ブログ>1対多人数のトーク>少人数のトーク>飲みの場の話、の順に多かったですね。会ったことのない人のブログは文章に過ぎないけど、身近な人の考えをブログで読むっていうのはすごく強いといつも思います。


2)物理的に同じ場所に集まらなくてもミーティングができる方法を模索する。

対面の会議を代替する新しいツールやルールの導入を推進することです。

前職の会社では関西に本社・東京に営業拠点があって、自分の入社当初は何か打合せしたいことがあるたびにスタッフが新幹線に乗って相当の経費がかかっていたのですが、IP網を使ったテレビ会議システムを導入したとたん、ちょっとしたミーティングにも活用されるようになって種々のプロジェクトのスピード感がと東西スタッフの距離感が格段に上がりました。
導入検討時には「ベンチャー企業には未相応な投資だ」とか「同じ空気で対面で話さなきゃ伝わらない(なんだそれ、ボディコンタクトでもするのww)」という声もあったんですが、導入して誰も反対する人はいませんでした。ウワサでは今は増量して2台になっているとか。
これはかれこれ5年ほど前のIT営業系ベンチャー会社での話です。今なら通信環境ハードもソフトも進化しているのでテレビ会議以外にもコミュニケーションの選択肢は多彩にあるでしょう。


3)1・2の推進について組織として理解・支援をする

上記1・2をはじめるためには出社派・在宅派を諍いなく共存させることが肝要です。

モノの伝わり方、アイデアの生まれ方(けみすとりい的な)、それ以外の何かの感情が生まれる(そういうの期待してる人はw)、などに於いて、実際集まってミーティングする以上の最適解はありません。それは認めます。
ただ、そういう大事な会議は散発的に行わず、週イチでも月イチでも日を決めて集めてやったらいいでしょう。(だから1の本当に必要な会議を絞る努力が必要です)

どうしても人は今までの慣れた方法・楽な方法に流されます。
大事なことは、ちょっと不便になるけど我慢してね、というごまかしではありません。「今までとはだいぶん変わるかもしれないけど、こんないいこともあるし、こんな可能性もあるからすぐにみんなで慣れましょう!」という方針。それだけで物事は捗るのではないでしょうか。

そんな雰囲気・風土が出来れば、出社派のスタッフも納得して、在宅・遠隔派のスタッフは安心して新世紀のワークスタイルに取り組めるのはないでしょうか。

そして半数とまではいかなくても3割くらいのスタッフが出社しなくて恒常的に仕事が出来る状況が創りだされば目下の節電はもちろん、中長期的にはオフィススペースの削減や、グローバルな人材採用など、サステナブルな組織に変容することもできるかもしれません。

以上、直近の2半年ほどを、正社員を辞して、定時出社を義務としない契約社員で勤めてきた経験のある自分の考えでございます。
的外れかもしれない経営的なことも生意気に飾って言っておりますが、本音ではなによりも、この夏、自分の大好きな仕事が満足して出来るかが本当に心配でなりません。
  • 熱気と人いきれの中での無理ゲー回避
  • 地方出身者が余震に怯える日々回避
  • 脳を刺激するノマドワークスタイルでアイデア150%増(自分比)
どうしようもないものなら受け入れますが、(今いる会社と言うより業界全体の話です!)あとほんの少しのレベルのような気がしているので訴えずにはいられないのでした(涙)



追記(2011.4.22)

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この記事についたコメント見ると、同じ業界内でも意識はまちまちだなーと感じました。僕も下記の記事の筆者のコメントに完全に同意です。

2011/04/21 18:42:58
セキュリティリスクがあるから自宅作業させない、って思考停止な気がするんだよな。どうやれば必要なことが達成出来るか考えるのを放棄せずに取り組んでみるのが大事だと思う。し、やってみてる。 

リスクとかデメリットとかいっぱいありますよ。だけどそこばかり見ていても何も始まらないですよね。
今までどうにもならなかった大きな病巣が解決できる可能性を考えたいです。
(ここからは僕の私見にもどります。)

▼たとえばその1・・・
中間管理職たちを悩ませる板挟みの中でのスタッフの評価。
そもそもプロセスがそんなに見えないのでシンプルに結果で判断しやすくなります。
社内でみんなときさくにおしゃべりをして、ムードメーカーとか言われているけど、やってる事といえば要点もまとめず自分の考えという付加価値もつけずメールをひたすら中継しているだけのようなスタッフに「がんばっているから」という意味のない評価はしなくてよくなります。
逆に、やりたいことだけは熱中してやるけど、最低限の決まりごとすらやっていない子供みたいなスタッフには、「情熱的だから」とか言う以前に、冷静な減点評価ができるようになります。
つまりは、対面でのごまかしが効かなくなる分、自然と合理的な方向に各人も改善されていくと思っています。

▼たとえばその2・・・
この業界にいると精神的なストレスが原因の通院・長期休暇・退職のウワサを毎日のように聞きます。
みんな会社というコミュニティに寄りかかりすぎ。依存しすぎると裏切られたと感じたときのダメージも大きくて、長期休暇とか病院通いになっちゃうので自己防衛的にも精神的な依存はほどほどの方がいいと思うのです。(この話も長いのでまたの機会にですね。)



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